NETFLIXのオリジナルドキュメンタリー「世界の”現実”旅行 Dark Tourism」を見ました。
ニュージーランドのジャーナリストであるデヴィッド・ファリアーが、世にも変わったダークなツアーに実際に参加してみるという番組。軽快でコメディタッチな番組の作りとは裏腹に結構ダークな場所に言って命知らずなことを聞きます。
これ、よくやるな!!
興味はありましたけど、基本的には行きたくないと思いましたよ。
家でネットフリックスで見るのが1番・・
世界の現実旅行 Dark Tourism
こんな内容
デヴィッドはニュージーランドのジャーナリスト。
彼はダークツーリズムという、死や破壊をテーマにしたツアーに興味を持ち、世界中で参加していきます。
南米、日本、アメリカ、中央アジア・・各国で行われているダークツアーは、一般的に賛否両論ではあるものの、ツアー参加者が後を絶ちません。
事件や宗教の当事者に聞きづらいことをガンガン聞いていく姿勢はあっぱれです。
シーズン1は8話構成。1話あたり40分と短めで、3つ〜4つの地域を訪れます。続きものではないのでサクッと見れますのでオススメです。
ダークツーリズムとは
ダークツーリズム(英語: Dark tourism)とは、災害被災跡地、戦争跡地など、人類の死や悲しみを対象にした観光のこと。ブラックツーリズム(英: Black tourism)または悲しみのツーリズム(英: Grief tourism)とも呼ばれている。
概念としては比較的最近のものです。へ~こんなツアーがあるのか・・と思っていたら、対象地を訪れたことがありました。皆さんもあるのでは?
- NYグラウンド・ゼロ
- 原爆ドーム
- アウシュヴィッツ
- チェルノブイリ
- ブラン城
などなど。Wikiに他の場所についても書いてあります。
ここが面白い!
やはり一番の面白さは、現実に起きた事件や事故などの爪痕を実際に体験しているところです。ほんとにこんなツアーやってるの??というものばかり。
と同時に、こんなのを飯のタネにしていいのか?という疑問が出てきます。ダークツーリズム自体、世界中で賛否両論です。そりゃそうですよね。死や悲しみがモチーフで、かつ現在もその問題を抱えている地域もあるわけですから。
ダークツーリズムに対する感情論はいったん置いておいて、デヴィッドのリポートによって世界の窮状をちょっとだけ自分事として捉えられるのがこの番組の醍醐味かと思います。
国境越えや原発の現状、デヴィッドが身を持って現地へ赴き体験していきます。ニュースやドラマなどのように遠くから見るのではなくて、1人の体験記だから身近に感じます。一緒にツアーに参加している気分。
ただし、40分番組で3ヶ所も4ヶ所も周るので、1つ1つはそんなに掘り下げられていません。不完全燃焼で終わる場所もしばしば。
しかし、興味を持って自分で調べれば情報が沢山出てくる場所ばかりです。掘り下げていないのは、視聴者が自発的に調べることを促しているのかも。
場所によってはツアーはやっていないところもありますから、一般的には行けない場所もあります。テレビ番組とか見ていても全く旅したくならない私ですが、これを見ていると旅行に行きたくなります。安全なところに限りますけど!
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各話の内容と感想
1話
南米を旅します。
まずコロンビアのメデジン。有名な麻薬王パブロ・エスコバルの本拠地だった場所です。
パブロは麻薬王ですが、メデジンでは貧しき者たちを救った英雄として称えられています。現在ナルコ・ツーリズムという、パブロの生きた証を追いかけるツアーが流行しています。
250人以上を殺したと言われる、パブロお付きだった暗殺者ポパイと喋ります。ポパイは現在Youtuberとして有名になっています。250人殺してるって・・本物の殺し屋が殺しのアクションしてるわけですから、ガチリアルですね。本物だと思うと演技でも怖くなりませんか?
そんなヤバイ相手達にも聞きづらいことをガンガン聞いていくの尊敬します。自分だったら無理。
コロンビアを経った後はメキシコです。
サンタ・ムエルテのリーダーとされているドナ・キエタ(エンリケ・ロメロ)の元を訪れ話を聞きます。
このドナ・キエタさん、普通のおばあちゃんにしか見えない。
サンタ・ムエルテといえばヤバイ事件をよく聞きますね。しかし、現在では信仰者が120万人いると言われていて、それを考えると別に犯罪者のような悪人だけが信仰している宗教ではないのです。
最後にアメリカへ帰ろうとするわけですが、テキーラを飲んで飛行機で悠々と・・はいきません。なんと不法移民として国境越えをするというツアーがあり、それに参加。
6時間徒歩の山道の途中で金品を強奪されたりと散々な目にあいます。最後はきっちり国境警備隊からお縄を頂戴・・
実際にツアーに参加することで、どれだけ国境を不法に越えることが大変で危険か。そしてそれを知った上で国境を越えようとする不法移民の数。ツアー主催者はこの窮状を訴えたかったようです。
これにて南米編は終わり。この中で1番ツアーとして面白そうなのは国境越えでしょうか。でも6時間もかけて銃声の中散々な目に合うのは・・
この番組をネットフリックスで見られている私たちは恵まれていますね・・
2話
日本を旅します。
いきなり福島の原発ツアーから始まります。こんなツアーあるんですね・・当時の映像が流れるので、耐えられない人は見ない方が良いでしょう。
福島原発周辺の現状がどうなっているのか。ガイガーカウンターを持ってツアー参加者たちは帰還困難区域や海岸を訪れます。うーん、このツアー企画が結構ブラックだなと思います。
ホコリを吸わないようにマスクをつけるんですが、デイビッドはマスク初体験と。やっぱ海外の人は生涯で一度もマスクつけないとかあるんだろうか。
次は佐世保のハウステンボスにある変なホテル。ロボットが従業員という一風変わったホテルです。ここは案外あっさりしたものでした。
世界の終末後をイメージした、というデイビッドの感想が面白い。あれ本当にそうなのだろうか。ターミネーターの見過ぎでは?
最後は富士山の樹海。世界で最も有名な自殺スポットと聞いてびっくり。日本ではそうだと思っていたけど、世界規模でもそうなのか。
幽霊といったスピリチュアルな話が出てきます。行ったことないからわかりませんが、樹海に幽霊がいてもおかしくないですよね。夜にあそこに1人でいたら本当に怖くてヤバイと思う。
最後は長崎の軍艦島へ。
軍艦島は60年前、世界で最も人口の多い島でした。わずかドーム数個分に5500人もの人々が住んでいたのです。
デイビッドは昔住んでいた人に上陸許可をとってもらい中に入ることができました。
廃墟と化したマンションはボロボロで、9階建てなのに柵がなかったりと、落ちたら絶対死ぬ・・という危険な場所でもあります。
しかし、ダークツーリズムとしては比較的ソフトな背景を持った場所ですね。
3話
アメリカを旅します。
まずは中西部のミルウォーキーへ。ここにはジェフリー・ダーマーという17人もの人間を殺した「ミルウォーキーの食人鬼」がいました。
そんなダーマーのファンであるナタリーという女性と一緒にダーマーツアーへ参加します。ダーマーツアーの参加者は女性ばかり。
彼女たちはダーマーにある程度共感・同情できると言います。見ている側としては「何言ってるのかよく分からない」と思いました・・
何故我々は殺人者にの心理に惹かれるのか?それは退屈な日常から逃れるための現実逃避だとデイビッドは締めくくります。
次はテキサス州のダラス。ジョン・F・ケネディ元大統領がパレード中に暗殺された場所へ行きます。そこは観光客だらけ。どうして暗殺がビジネスになるのか?デイビッドはケネディツアーに参加して探ります。
企画者はこう言います。歴史を伝えているんだと。確かにそうかもしれない。でも、陰謀論の展開やVRツアーによる再現映像など、正確に歴史を伝えているのかどうか・・少し怪しいところではありますね。
結局JFK暗殺事件は未だに謎の残る事件です。
最後はニューオーリンズ。バンパイアツアーに参加します。
牙鍛治という面白い職業があるんですね〜。土地柄でしょうけど、ちゃんと自分に合った吸血の牙を作ってくれるのは少し嬉しいかも。150ドルか・・
血を飲む姿を見せてくれ、とデイビッドは聞いて周ります。実際に血を飲んでいるところを見ると、衛生的にどうなのとかそっちに気が回っちゃいますね。
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4話
中央アジアへ旅します。
最初はカザフスタンのポリゴンへ。ここは世界で最も核爆弾を受けた土地として知られています。ソビエト連邦による度重なる核実験の結果です。
デイビッドと同行者のアンディは原子の湖を訪れます。汚染されているこの湖で不思議なのは、釣りをしている人がいること。そしてそこで獲れた魚を振舞われます。絶対食べたくない。さらになんと泳ぎます。クレイジー。
そして一向はグラウンドゼロへ。ガイドのコンスタンティンは、人々への放射能の影響について聞いたことがないと否定します。
そこでデイビッドは医者を訪ね、孤児院を訪れるように言われます。その孤児院では子供達が放射能の影響か、麻痺などの病気を患っていました。
核実験の後遺症は今でも存在しているのです。
次もカザフスタン。バイコヌールへ。
ロシアの宇宙プログラムの本拠地です。今でも街中に入るのは難しいとのこと。
間近でロケット発射を見ることができます。映画の中でしか見たことないけど、実際に有人ロケットが飛ぶのを見られるのは面白そう。ただ、ダークツーリズムなのかはよく分かりませんでした。
でも行ってみたいなとは思いましたね。観光料は高いらしいですが。
最後はタルクメニスタンのアシガバード。
地球上最も孤立して、抑圧的な体制の国です。普段は外国人記者は立ち入れませんが、スポーツ大会が催されることに乗じてスポーツ記者として乗り込みます。
スポーツ大会なのに全く観光客がいません。盗聴の危険性があり、政府や大統領に批判的なことを言うと投獄・拷問されるかもしれないとのこと。
大会の開会式は豪華絢爛で、リオオリンピックよりもお金がかかっていたそうです。外から人が全然来ない大会で・・と思いますけどね。
この抑圧的な国から無事脱出できたデイビッドは言います。ダークツーリズムの本当の喜びは、戻った時にあるのだと。
5話
ヨーロッパへ旅します。
まずはイギリスのパドックウッドへ。世界最大の戦争フェスティバルが行われる場所です。この祭りの良さがよく分からないデイビッドは模擬戦闘に参加してみることに。第2次世界大戦を模したこの世界観に入り込みます。
実際に戦争時中のような体験をするのは、いかに戦争が惨めなものか理解するためでしょうか。模擬戦闘もかなり本格的ですし、ちょっと参加してみたいとは思いました。サバゲーのガチバージョンですよね。
しかし、この祭りで戦争の凄惨な歴史を理解し、予防できるのか・・疑問は残ります。
次はウェールズのリトルディーンへ。のどかな田園地帯ですが、ここには犯罪博物館があります。一体誰が収集し、なんのために展示しているのか。デイビッドはそれを探るために訪ねます。
博物館に入り、衝撃的な展示物を目にします。KKKが黒人の子供の首に縄をかけている模型です。かなり物議を醸す展示ですね。アウシュビッツのジオラマもハード。
結局、彼自身がタブーに惹き寄せられる以外に何のためにこの博物館が存在しているかは分かりませんでした。世界中探してもこんな博物館他にないから?それが理由なのかもしれません。
最後はかなり離れたキプロス島のファマグスタへ。トルコ軍に侵略されて南北に2分化されたキプロス。ファマグスタは紛争後にトルコ軍が立ち入りを禁じたため、ゴーストシティとなります。
デイビッドはなんとか北キプロスへ行きますが、そこはトルコだけが国として認めた場所であり、誰の庇護もない中での行動となります。恐ろしい・・
トルコの大きな国旗がそこかしこに掲げてあります。トルコにこんな側面があったのか・・と歴史に疎い私は驚きましたね。
結局何度もトライしましたが、ファマグスタへの潜入は不可能でした。
6話
東南アジアへ旅します。
カンボジアのプノンペン。ここではお金を出せば生きている動物などを標的に銃を撃てる。そんな噂を聞いてデイビッドが真相を確かめに行きます。
射撃場にて、半信半疑で聞いてみると人間以外ならお金を出せば撃てると言われます。実際に牛を目の前に銃まで構えますが、デイビッドは撃てません。都市伝説は実在しました。本当に撃てるんですね・・
そしてミャンマーへ飛びます。2015年に民主主義となったミャンマーは観光を推奨し始め、ネピドーという田舎に50億円かけて首都を築きます。しかし観光客はおらず、物凄く静かです。
謎の20車線の道路とか。初めて20車線なんて見ましたが、動物がのそのそ歩いているくらい車の通行量はありません。ガイドが渋滞がないからいいって繰り返し言ってるのが不思議です。
国会も豪華な作りですが、人も少なくまばらです。逆に、街は豪華とは程遠いですが、人も多く活気に溢れています。作られた街よりも断然居心地が良さそうです。
最後はインドネシアのトラジャ。トラジャ族は独特の葬儀を行います。死んだ2年後に葬式を行うのです。トラジャ族によると、死は突然くるものではなく、死後の世界へと続く緩やかな過程だそうです。
その後水牛の戦いが行われ、生贄が捧げられます。大量の水牛と豚をその場で殺して食べます。なかなかハードなシーンです。
また、年に一度、墓から遺体を掘り起こして洗浄するマネネという儀式もあります。ミイラと一緒に写真撮影している様子がなんとも不思議ですね。文化の違いを物凄く感じる内容でした。
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7話
アフリカへ旅します。
西アフリカのベナン共和国へ行きます。ブードゥー教で有名な場所です。デイビッドは女司祭マーティンの元に弟子入りすることになります。
やっぱりブードゥーは血が必要なようで、鶏を殺してその血を使って儀式を行います。ブードゥーにも様々あるようで、トランス状態で自傷するちょっとヤバめなやつもありました。
次に南アフリカのヨハネスブルグ。最も危険な都市として名高い街ですが、果たしてその評判通りなのか。
自転車ツアーに参加しますが、思いのほか安全そうでした。ガイドもそんな危険じゃないよと言っていますが、我々の先入観がいけないのでしょうか。それでも怖いな〜と思います。
今はスピニングという、車をスピンさせるスポーツが人気です。ヨハネスブルグも変わっているんですね。
最後はオラニアへ。アパルトヘイトの崩壊後、アフリカーナが逃げた場所です。しかしそこでは思ったような話が聞けませんでした。
ラントフォンテーンへと移動し、過激派と言われるスイドランダーの夫妻に会い話を聞きます。
彼らは黒人が蜂起して白人を虐殺しにくるとの予言を堅く信じていて、逃げるための予行練習まで行います。なんだかドラマを見ている気分。そんな黙示録的な日は来なさそうな気がします。
8話
最終話。再びアメリカを旅します。
ロサンゼルスでマンソンファミリーが行った虐殺ツアーに参加します。アメリカで最も凶悪と言われた犯罪者、チャールズ・マンソンは奇しくも翌日に自然死したと報じられます。
そこで、人気のあるユーチューバーのストーナーに会ってみることに。殺人犯の熱狂的なファンっているもんなんですね。そして、実際にマンソンの遺産を相続した文通友達を紹介してもらうことに成功します。
彼はマンソンが友人であり、彼は悪くないと主張します。一見超凶悪な犯罪でも人によって見方が違うものなんですね。
次はケンタッキーのウィリアムズタウン。ノアの方舟の巨大な模型を見ます。中には7000種類もの動物の模型も。ここは面白そうですね。
世紀末が来ると信じている人たちがいますが、果たして本当に起こるのか・・前回のアフリカーナと違い、狂信的というよりは準備するだけはする、使わなくて済むならそれでいい。と言っていて、どちらかと言うと気持ちはわかる気はします。
最後はテネシーのサマータウンへ。マッケイミー屋敷という、世界でも最も恐ろしいホラーハウスがあります。ラス・マッケイミーという元軍人による死ぬか死なないかの拷問体験です。
なんか動画がありますが、それみるとかなりヤバそうな感じがします。何が起きてもラスを責められないという権利放棄書を読むだけで5時間・・
そして実際に拷問体験がスタートしますが、デイビッドはもはや本格的な拷問が始まる前にビビりまくって降参します。そしてもう1人一緒に行ったニックもわずか数分でリタイア。
終わった後の2人の恐怖に凍りついた表情が印象的です。これは絶対私無理だろうな・・
あとがき
世界の現実旅行は世界中の死や災害にまつわる場所を旅する番組ですが、中には別にダークツーリズムか?という場所もありましたね。
こういったツアーは不謹慎だという議論は当然でますが、非日常に惹かれてしまう人々が後を絶たないのも分かります。
世界で起きている悲惨な状況を知ることも出来ます。それを悲壮感溢れるタッチで描いておらず、気軽にみられるのが良いですね。
おすすめです。